tumblr_lhj1vwLAwn1qhq1uvo1_500 『だいこんはかえるにくつしたさえしいたけ』 Quote

高校生の頃、いつも喧嘩してた妹がいた。喧嘩といって他愛もない口げんかで、ある程度言い合ったらどちらかが自然と引く。 
ニュースであるような殺傷事件には到底至らないような、軽い喧嘩だった。

高校三年の春だった。成績が凄く落ちてて、志望校に合格するのが危うかった。 
そのせいで親の風当たりがきつく、テストが悪い時なんか、一人だけご飯のおかずがニボシだけ、なんてこともあった。 
追い込まれていたからか、妹のいつもの態度がやけにイライラしてくる。 
何を言われたかは覚えてないが、カッとなって妹にテレビのリモコンを投げた。リモコンは丁度妹の後頭部に直撃。妹は頭を抑えて倒れた。俺はあせった。 
死んだのか?とりあえず近づいて確認。脈をはかると死んではいないよう。でも気絶してるから病院にいったほうがいい。 
そう思ったのだが、俺に辛くあたる母にこの事がバレたらどうなるかわからない。 
俺は気絶したままの妹をそのままソファーに寝かせ、二階に上がった。

次の日、妹に何て謝ろうかと思って二階から降りていくと、妹は普段どおり朝飯を食べていた。どうやら怒ってはいないようだ。 
昨日の事を申し訳なく思っていたのか、久しぶりにこちらから声をかけた。すると全く反応しない。 
やはり怒ってるのだろうか?そう思ったんだが、今考えると、怒っていただけの方がよかったんだ。

妹は、その日から性格が変わってしまった。学校から帰ってくると、いつも友達と遊びに行ってたのに、学校にいく以外部屋から全く出なくなった。 
そして、家族内で会話をしないようになった。親父が「わざと無視でもしてるのか」と問い詰めた時があった。それでも妹は、全く無表情で通した。

妹が喋らなくなって一ヶ月。親父とオフクロが俺を呼んだ。 
「お前何かしたのか?」そう聞かれた。「何を?」と聞き返すと、なにかいいにくそうなのだ。親父はこう考えた。 
妹は何か凄く落ち込む事があった。でもそれは人に話せるような事じゃない。だから喋らないと。つまり、俺が性的虐待をしたと思ったのだ。


なんとか疑いを晴らすことはできた。だけど、妹をああいう状態にしたのは俺なのだ。 
やり方は違えど原因は俺なのだ。なんとか妹に、元に戻ってもらおうと思った。

次の日、学校から帰ってきた俺は、妹の部屋にいった。妹はまだ家に帰ってきてない。 
帰ってきた後だと部屋に鍵をかけて出てこないので、今しか部屋に入る機会がないのだ。 
妹の部屋は、喋らなくなる前と代わりがなかった。もし壁中黒塗りなんて事になってたら、俺は泣こうと思っていた。 
本当に最悪なんだが、俺は妹の胸中を知るため、妹の日記帳を探した。妹が幼い頃から日記をつけていたのを俺は知っていた。 
机の上にある簡易本棚の中から日記帳を取り出し、中身を見た。

日記帳をパラパラめくると、とくに異常はない。だが、ページ数が半分くらいになった時、妙なページが見えた。 
俺はそこをよく見た。そのページから先のページは、妹の字ではない、とても大きくて、歪んだ字の羅列だった。 
よく見ると、その字はちゃんとしたひらがなだったが、文章が意味不明だった。 
例えば、『だいこんはかえるにくつしたさえしいたけ』こんな感じの文が数十ページ続いていた。俺は妹の脳を損傷させたんだと思った。凄く後悔した。 
妹に悪いことをしたという気持ちも大きかったが、俺は刑務所に入れられるんだなと思ったからだ。

半泣きで頭をかきむしっていると、後ろに誰かいる事に気づく。振り返ると、そこには妹が立っていた。 
妹は、全くの無表情だった。夕方で電気をつけてなかったから、無表情の妹の顔が真っ黒だった。 
妹は何もいわずに、ゆっくり部屋に入ってきた。俺は後ろにさがった。 
妹はカバンを机の横にかけると、俺が部屋に入っていることが不快なのか、俺の方向を見たまま静止した。 
あせりつつもなんとか頭を整理した俺は、妹に土下座で謝ろうと思った。なにも返事はしてくれないだろう。でも、土下座をしなければ俺の罪悪感が納まらなかった。 
土下座をしようと、中腰になろうとした。その時、妹が物凄い速さで俺の腕にしがみついた。一瞬何をしたのかわからなかった。 
その勢いで妹は、そのまま部屋から出て行った。俺は唖然としつつ、右手に持っていた妹の日記が奪われた事に気づいた。

妹はその日の夜、姿をくらました。現在も妹はうちに戻らない。




source : Qetimblr


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