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車を走らせているうちに僕たちは、福島第1原発の正面玄関前まで入ってしまいました。
報道というフィルター無しに、原発の現状をどうしても自分の目で見たかったからです。
正面入り口は、放射能さえなければ特別に慌しい雰囲気もありませんでした。
時を経て正面入り口から近くの町へと移動した僕たちは、たまたま出会った車上の人に「…へはどう行くのか?」と聞いたのです。
実は、一箇所だけ原発の全容を撮影できる場所がソノ近くにあったのです。
彼は「行かれるが…」と答えてくれました。
「でも行くな」
大声でもなく怒りの声でもなく、諦めきったような落ち着きの中で淡々とした声でしたが、初めて僕らは恐怖を覚えました。
彼は内ポケットから線量計を取り出すと、僕の身体に向けました。
その計測器がピーピーと鳴っていました。
「あそこは…全然違うから…行くな」
そうして彼は去っていきました。
多分彼は、東電の下請け労働者だったに違いありませんでした。

僕らは、原発から7㌔ほど離れた、津波で壊滅した街へと向かいました。
津波が破壊したその町は、無事だった人々も原発の事故で急いで非難したらしく全く手付かずの瓦礫の山でした。
地面からビルの三四階の高さまで埋め尽くす、かつては人々が暮らしたであろう
モノの残骸。
一切が震災と津波の時のままに放棄されているのだと思いました。
シンと静まりかえった瓦礫の山。
取り残された犬と猫が、陽炎のようにさ迷っている。
放射能の汚染下では、全てのものが放棄されていく。
そして再び僕らは原発から3㌔以内の村や町へ向かいました。
戸締りもしないまま飛び出すように逃げ出した様子が、家々のたたずまいから伝わってきます。
見捨てられた犬と猫が餌を求めていました。
道路には、小動物の死骸が点在しています。
狸や猫たち、そして放棄された養鶏場や小屋に閉じ込められた牛。
ある家では、鎖に繋がれた飼い犬に鎖から自由な別の犬が自分の唾液を
舐めさせていました。
飢えて乾ききっているのです。
犬たちも、そうやって唾液を舐めあって生きようとしている。

source : 映画「廃都」製作日記