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狐憑きというのは狐が乗り移ってかかるという一種の精神病だと言われており、その発生は人口比率からいえば市街地のほうが多いはずだが、実際は農村地帯に多く、しかも山林原野の多い地域に集まり、市街地では裏町に多いと言った行商人がいたが、どういう理由なのだろうか。

 

また、狐憑きは圧倒的に女性が多いが、女性のほうが狐に好かれるのかも知れない。
以前、知り合いの農家にも狐憑きの娘がいて、よその人が来たり犬の鳴き声が聞こえると夜着を深く被ってしまったが、時々その袖をそっと持ち上げて辺りの様子をうかがい、妙な声を出したりするので近所の人は「年頃だというのに、あれではお嫁にも行けないだろう」と、気の毒がっていた。

 

狐が憑くと動作が狐のようになり、食事のとき両手の甲を平にして指先だけ曲げ、お膳をなでたりひっかいたり、小首をかしげて食器の中を覗きこんだり、気味悪いしぐさをする。

 

また素直でおとなしい娘でも、油揚げがほしいとか赤飯が食べたいとか狐になりきったねだりごとをして、要求が満たされないと暴れたり仇をしたりする。

 

狐憑きも強い人には従順だと言われているが、或る家では実兄が家にいるときは狐憑きの妹は極めておとなしく、その兄さんがいないときに我がままいっぱいに振る舞い、家人を手こずらさせたと聞いている。その兄さんという人は体格もよく気性も激しかったので、狐もおそれをなしたのだろう。

 

狐憑きの使った夜着に、狐の毛がいっぱい付いていたという話はよく聞いたが、それが事実なのか、また本当の狐の毛だったかどうか疑わしい。

 

たいてい突然に「帰るから赤飯を炊いて送り出してくれ」と、村外れの辻や、人気のない原っぱや河原を指定し、言うとおりにしてやると狐が落ちて正常に戻るのだが、長く狐の落ちない者は衰弱して死んだようである。

 

 

 

source : 狐憑き

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