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わたくしが高校生の時に、大学紛争がありました。ところが、彼らの訴えるスローガンを眺めていても、何に反対していたのかまったく分からない。中身がない。唱えているのはマルクス主義でした。そのことに理論的に違和感を持つのは大学生になってからですが、それ以前に、高校生として普通に新聞を読んでいて感じたのは、旧ソ連や中国が現に何をしてきたか分からないはずはないのに、ということです。スターリン体制があり、文化大革命があり、いったいどれだけの人を殺してきたか。そういう体制をなぜ日本の若者、大学生が信奉するのか、まったく分かりませんでした。それで直感として「あ、彼らは勉強していない」と思ったのです。

自分自身の言葉を持っていなかったのかもしれない。言葉にすれば疑問が生まれてくる。答えは一つなのか。ひょっとしたら別の答えはないのか。考えは広がっていくはずです。わたくしは別に資本主義が正しいとも思いませんが少なくとも自問はします。それが正しいのかずっと問いを立てて考えました。団塊世代の人たちはマルクス主義が正しいのか、自分で考えた気配がない。そして、70年代にすーっと学生運動をやめて、バブルの担い手になっていく。お金を転がすことを始めた。マネーゲームです。

<日本は戦後復興し、バブル期を迎え、それがはじけて、いま、社会は沈滞感に包まれている>

子供がみな、勉強する意味を見失っています。試験でいい点を取るなんて意味はなく、人生で何か問題が起きたときに、なぜそれが起きたのかを理解し、どうしたらいいのかを考えるために本を読んだり勉強したりするのですよね。それが完全に見えなくなっている。

やはり団塊の世代が悪いような気がする。彼らは、会社で、昼間は一生懸命働いてくれたのはいいとして、夜、飲み屋さんに繰り出して、酔っ払って、二日酔いで大変な思いをして……。でも、勉強しなかった。彼ら自身は自分の人生だから、好きにすればいいんですけど、親となり、教師となり、社会をリードする立場になったとき、下の世代の子供たちに何を教えたのか。腹が立ちます。

source : 時代を駆ける:高村薫/7 勉強してない団塊の世代 – 毎日jp(毎日新聞)