最終意見陳述

平成17年5月18日公判の一審結審前には最終意見陳述が行われた。とても真に迫る内容なので、以下緒方被告のその全文を引用したい。
「松永と過ごした20年間は、社会から離れて生活していました。そのせいか逮捕されて身柄を拘束されても、特に不自然は感じませんでした。でも私が松永から精神的に開放されるまでには、長い時間かかりました。当初は自分の殻を頑なに守っておりましたが、一日一日いろいろなかたと接し、挨拶に始まり、会話を重ねるうちに、少しずつ心が穏やかになるのを感じました。おかげで私はかわることができ、松永の呪縛から逃れることができました(捜査員、検察官、弁護人の名前をひとひひとり読み上げる)それらの人との出会いがなければ、今の私はありませんでした。深く感謝しております。20年間で失った自分を、3年間で取り戻せました。本当にありがたいと思っています。私はすべての真実を知っているわけではありません。また一人一人の心のうちを知っていたわけでもなく、まして、その本当の辛さ苦しさを分かっていたともいえません。それでも亡くなった被害者のお一人お一人のことを、できるうるかぎり話す義務があると思い、代弁者になろうと公判で話してきました。そしてそれは、亡くなられた方々の無念を晴らすまでにはいたらなくても、ほんの少しの慰めることになるのではないかとという償いの意味もありました。いま思うとすべてが異常でした。今の私は、あの当時の自分が信じられません。どうしてあんなことができたのだろうと思いますが、私が自分で犯した罪には違いありません。私には二人のこどもがおります。これから一生を通じ、広く世間の皆様に育てていただくことになります。彼らが生きてゆく社会がよりよいものであって欲しい。そして、その思いは今、すべての子供たちに向かっております。子供が巻き込まれた事件を耳にするたびに、わが身を苛まれ、いたたまれなくなります。どうか子供たちを取り巻くこの社会が、少なくとも子供たちにとって安全で、より良いものであって欲しい。私は優貴くんと彩ちゃんのことをよく考えます。そして自分の罪の重さと悔悟の念からそれを切に願うようになりました。人生をやり直すことはできませんが、自分のこの罪を通して私も何かできないかと思っております。もちろん、私の自己満足に過ぎないのですが、時間の許す限り、このような私にもできる事をこれから考えていこうと思っております。振り返りますと、たくさんの方に御迷惑をおかけし、傷つけてきました。ワールド時代の頃のことも私の消えない罪です。本当に申しわけないことをしたと悔いております。また虎谷沙織さん、横山明美さんにも心からお詫び申しあげます。それから御遺族の皆様、そのお心に計り知れない、そして生涯消えることのない傷を負わせてしましましたことを大変申しわけなく思っております。そして亡くなられた方々に深くお詫びいたします。私の罪が、この命ひとつで償えるほど軽いとは思っておりませんが、どうぞそれでお許しください。最後にこのような大それた事件を起こしましたことで、広く世間の皆様に御迷惑をおかけいたしましたことを心からお詫びいたします」

松永の最終意見陳述

「死刑になるのを覚悟して供述してるのだから、緒方純子の言うことは信用できるという『純子神話』が作られた・・・・この裁判はイメージが先行して判決も出来上がっているのではないでしょうか?裁判が証拠に基づいて判決を行うものであることを、はっきり示して欲しい」

松永二審の死刑判決に対し

松永被告は、終始、落ち着かない様子。「責任を緒方被告に転嫁し、自分だけが罪を免れようと計画していた」「真摯(しんし)な反省は全く見られない」。判決で厳しく指弾されても、硬い表情のまま。緒方被告の量刑朗読部分になると、大きく首を振り、メモを取る手を早めた。閉廷後、弁護団に「証拠の評価を誤っている。不当判決だ」と興奮した様子で語り、法廷を後にした。
松永被告の弁護人も記者会見し、「緒方被告の無期懲役判決に驚いた。松永被告は控訴審で、緒方被告の供述は自らの被害者性を強調するものと主張してきたのに、緒方供述の信用性がほぼ認められたのは大いに不満」とした。

緒方二審の無期懲役について

緒方被告の弁護団は閉廷後に記者会見し「正直ほっとした。判決は事件の背景事情などをつぶさに検討した結果で、評価できる」と述べた。緒方被告については「極刑を覚悟していた部分もあると思う。今後、松永被告の支配から逃れて従来の人格に戻るにつれ、しょく罪の気持ちがより強まるのでは」と述べた。

福岡高裁緒方純子の弁護士古賀美穂

一審死刑から、二審無期懲役の判決が出た直後のコメント。
緒方純子は「かなり、思いがけない部分もあり、今現在、頭が真っ白な状態である」と語る。
判決内容を精査して上告するかどうか決める。

減刑の嘆願書

二審判決では776人もの減刑嘆願が福岡高裁に送られた。
福岡市を拠点に活動し、署名運動の中心となった「ぐるうぷNO!セクシュアルハラスメント」の石本宗子さん(55)は「緒方被告はDVの被害者」と訴える。緒方被告が松永被告から長年にわたり、通電などの虐待による支配を受け、外出や排せつまで制限されていたことを挙げ、「寝ること、食べることすら自分で選べず、追いつめられた中で殺害への加担を余儀なくされた」と話している。

元最高検検事土本武司

全ての裁判を傍聴した上で「実行行為をした(緒方純子の無期懲役は)妥当な量刑とはいえない」と批判している。

事件その後地裁両被告死刑に対して

佐木隆三(作家)の見解。
検察官の職責は、起訴した事実を証明し、その犯情に照らして、裁判所に処罰を求めることである。今回の論告求刑公判は、大変わかりやすく、理路整然としていた。この難事件を解明した努力に、公判を傍聴し続けた者として、敬意を表したい。
 しかし、松永太被告を首謀者で主犯と断定した上で「不可欠な実行犯」の緒方純子被告と、刑事責任に差異がないとの主張は、納得することができない。
 論告によれば「被告人両名は、善悪のたがが外れた発案者と、その指示にひたすら従う忠実な実行者として、車の両輪と言える関係となり果てていた」と。とはいえ1台の馬車なら、ムチを振るう御者と、ひた走る馬ではないか。知り合って20年余り、幼稚園の教諭だった女性は、サディストの男性から、人間扱いされていなかった。
 私が裁判所へ通った理由は、「なぜ緒方被告が親族を6人も殺害したのか」を知りたいためだった。その疑問は2003年10月から始まった集中審理で、両被告への被告人質問が回を重ねるにつれて氷解した。まさに先述のように、ムチを振るう御者(この場合は通電行為)と、ひた走るしかない馬の関係だった。
 このように虐待された緒方被告に、罪を犯さないことが期待できただろうか。私は法律の実務家ではないけれど、むしろ「裁判員」のように「国民の健全な常識の反映」として、両被告が共に死刑という求刑に、異を唱えたいのである。

福岡高検、死刑判決の基準を示した最高裁判例に違反するとして上告

 北九州市小倉北区の監禁連続殺人事件で殺人罪などに問われ、福岡高裁の控訴審判決で死刑から無期懲役に刑が軽減された緒方純子被告(45)について、福岡高検は「死刑判決の基準を示した最高裁判例に違反する」として上告する方針を固めた。同高検は5日にも最高検と協議し、最終決定する。
 9月26日の福岡高裁判決は1審福岡地裁小倉支部の判決と同様の事実認定をした上で、松永太被告(46)については死刑とした1審判決を支持し、控訴を棄却。緒方被告については「暴力、虐待の影響で正常な判断力がある程度低下していた」と認定し「緒方被告の情状は松永被告と格段の差がある」と結論付け、1審判決を破棄し無期懲役を言い渡した。
 これに対し、高検は高裁判決が緒方被告の責任能力を認め、6件の殺人罪と1件の傷害致死罪という犯罪史上まれにみる重大な犯罪を認定しながら、情状面を評価して無期懲役とした点を重視。4人連続射殺事件の永山則夫元死刑囚(犯行時19歳)に対する最高裁判決(1983年)、山口県光市の母子殺人事件の最高裁判決(2006年)で示された犯行の罪質や被害者の数などの死刑選択基準に違反すると判断した。

緒方被告が拘置所で愛読している本

『それでも人生にイエスと言う』
実存分析を創始した精神医学者として知られるフランクル。第二次大戦中、ナチス強制収容所の地獄に等しい体験をした彼は、その後、人間の実存を見つめ、精神の尊厳を重視した独自の思想を展開した。本講演集は、平易な言葉でその体験と思索を語った万人向けの書であり、苦悩を抱えている人のみならず、ニヒリズムに陥っている現代人すべてにとっての救いの書である。

松永への手紙

814-8503福岡市早良区百道2-16-10
福岡拘置所 松永太様 で手紙を出せる。
松永には専属の刑務官が付いている。
2009年の春に松永の父親は逝去した(死因は公表されず)母親は連絡がつかず行方不明。2歳上の姉(公務員)も心労気味。

雑誌などの接見記事

月刊「創」2005年12月号「小倉監禁殺人事件被告緒方純子さんと会って」甲木京子

最高裁判決の予定

2010年7月現在、期日未定。問い合わせは最高裁(℡03-3264-8111 内2462)

テレビ報道

当時、少女が未成年ということ、事件があまりにも残酷であったことを総合的に判断して、放送局が自主規制するようになった。

犯罪被害者給付金訴訟 2008年8月01日読売新聞

北九州市の監禁連続殺人事件で父親を殺害され、自らも監禁された女性(24)が、犯罪被害者給付金を不支給とした福岡県公安委員会の裁定を不服として、裁定の取り消しを求めた審査請求について、国家公安委員会が棄却していたことが分かった。
女性側は、裁定取り消しを求める行政訴訟を福岡地裁に起こすことを検討する。
福岡地裁小倉支部の1審判決(2005年9月)などによると、女性の父親は1996年2月に殺害された。監禁されていた女性は02年に逃げ出し、1審判決後の06年2月、県公安委に給付を申請した。
県公安委は昨年3月、「女性の申請は父親の死亡時から約10年が経過しており、請求権が消滅する除斥期間(7年)を過ぎている」として不支給と裁定した。
これに対し、女性側は〈1〉この事件では申請に必要な死亡診断書や死体検案書などが存在しない〈2〉女性は監禁されていて物理的に申請できなかったと指摘。
「申請の権利を行使できなかった場合、請求権は存続していると考えるべきだ」として同年4月、国家公安委に審査請求していた。
この事件などを受け、国は給付金の申請期限に特例を認め、今年7月から改正犯罪被害者等給付金支給法を施行した。
 改正法ではやむを得ない理由で申請できない場合は、その事情解消から6か月以内は申請できるようになった。

犯罪被害者給付金 2008年12月18日読売新聞

北九州市の監禁連続殺人事件で父親を殺害された後、自らも約6年間監禁された女性(26)の犯罪被害者給付金の申請について、制度上の申請期限を過ぎたことを理由に不支給とした福岡県公安委員会の裁定の是非が問われた訴訟の判決が8日、福岡地裁であった。
 高野裕裁判長は「女性には期限内に申請できなかった特別な事情があった。申請期限を当てはめるのは、被害者を救う制度の趣旨や正義の観念に著しく反する」と指摘し、県公安委の不支給裁定を取り消した。
 判決によると、原告女性は、10歳だった1995年から父親と一緒に松永太被告(49)らと同居。女性の父親は96年2月に死亡し、女性は2002年3月、市内のマンションから逃げ出し、事件が発覚した。松永被告らの刑事裁判で、05年9月の1審判決は、父親が殺害され、女性も監禁されていたと認定。この判決をもとに女性は06年2月に申請したが、翌年3月、県公安委が不支給とした。
 犯罪被害者等給付金支給法は、申請期限を「死んでから7年、犯罪被害による死亡を知ってから2年」と規定。今回の訴訟で県公安委側は「申請時に父親殺害から10年も過ぎており、申請権はなくなっていた」と主張した。
 高野裁判長は、7年の期限を申請権そのものが消滅する除斥期間、2年の期限を時効ととらえた。7年の期限については、松永被告が犯行を否認しており、1審判決が出るまで、女性には父親が殺害されたことを証明する方法がなかったと指摘。「権利の行使が客観的に不可能で、除斥期間は適用されない」と判断した。
 さらに、2年の期限について、時効起算点は、父親死亡の96年ではなく、法的に殺害が認定された05年の1審判決時とした。「女性は被告らに強く支配され、自分のせいで父親は死んだと思い込まされており、逃げた後も、すぐには申請できなかった」と述べた上で、申請は期限を過ぎておらず、県公安委の処分は違法と結論付けた。

犯罪被害者給付金訴訟 2010年7月09日読売新聞

北九州市の監禁連続殺人事件で父親を殺害され、自らも監禁された女性(24)が18日、福岡県を相手に、期限を過ぎて申請したことを理由に犯罪被害者給付金を不支給とした福岡県公安委員会の裁定取り消しを求め、福岡地裁に提訴した。
 女性の父親は1996年2月に殺害され、女性は2002年に監禁状態から抜け出した。05年9月の福岡地裁小倉支部判決で父親殺害が認定されたことを受け、女性は06年2月、県公安委に給付金を申請した。
 しかし、県公安委は、犯罪被害者等給付金支給法が申請期限を「犯罪被害が発生してから7年」と定めていることを根拠に不支給を裁定。国家公安委員会も女性の審査請求を棄却した。
 訴状などで、女性は、殺害から7年以内の申請は不可能だったと主張。理由として〈1〉監禁状態にあった〈2〉死体検案書など、父親の殺害を証明する証拠がなかった――ことを挙げている。
 女性を支援する弁護団によると、給付金が認められた場合、父親は死亡時に無職だったため、額は300万円超になるという。弁護団は、受刑者らのしょく罪寄付からなる県弁護士会の基金を訴訟費用に充てる。
 県弁護士会館で記者会見した弁護団長の東敦子弁護士は「被害者を救済するのが法の趣旨。今回のケースは、申請したくてもできなかった人を形式的な法律解釈で支給できないとしたもので問題がある」と話した。

犯罪被害者給付金訴訟 2010年7月22日読売新聞

北九州市の監禁連続殺人事件で父親を殺害された後、自らも監禁された女性(26)が申請した犯罪被害者給付金を巡る訴訟で、福岡県公安委員会は22日、県公安委の不支給裁定を取り消した福岡地裁判決を不服として、控訴することを決めた。
 県公安委は、控訴せず女性の申請を特別に認めると、他の申請者との間で不均衡が生じかねない、と判断したとみられる。
 今月8日の地裁判決は、県公安委が犯罪被害者等給付金支給法の申請期限を過ぎていたと判断したことについて「女性には期限内に申請できなかった特別な事情があり、期限を当てはめるのは、被害者を救う制度の趣旨や正義の観念に著しく反する」と指摘。不支給裁定は違法とした。
 女性の弁護団は15日、「女性の生きていく希望を壊さないでほしい」として、県公安委に控訴断念を求める申し入れ書を提出していた。

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