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母親が死んだ。
母親が死んだとき私は友達と八王子の白木屋で飲んでいて、それは後々発覚するのだけど実は現在絶賛営業成績右下がり中の親父の店で親父はそれと母親が死んだことで毎日実家の自分の部屋から出てこなくなっていた。
母親が死んだことで久しぶりに実家に帰った私は親父の部屋の前を通り過ぎ妹の部屋に滞在する。
妹は珍しく髪を伸ばしていて、二次成長期特有の四肢だけが長く伸びた細い体をしていた。黒い髪に、黒いワンピース。
「お姉ちゃん、私、魂誘拐されそうなんだ」
「は?魂?」
「今流行ってんの。魂誘拐事件」
「あくのそしきみたいのに魂だけ誘拐されちゃうんだよ」
ああ知ってる。その話は知ってる。なんだかよくわからない黒い空間に黒い組織みたいのがいて夢のようなその異空間から人の意識に直接呼びかけて魂だけを連れて行ってしまう誘拐事件だ。魂を誘拐された人間はよだれたれっぱの阿呆になる。もうしゃべらないし動けない。寝たきりでよだれたれっぱのボケ老人になる。
「ママも魂誘拐されたんだよ」
「そうなの?」
「だからパパも」
「そうだったんだ」
驚いたふりをするけど私は知ってる。母親は魂誘拐事件の被害者ではない。事故で死んだ。だから本体も死んだ。車に轢かれて普通に死んだ。
親父も母親が死んだショックであんなんなってるだけで、魂誘拐事件の被害者ではない。
「私もしょっちゅうアクセスがくるの。必死に抵抗してるんだけどどんどん強くなってるの。たすけて」
と言ったっきり妹は意識を失って震えるように痙攣しはじめた。
どうやら本当らしい。慌てて名前を呼びながら妹の体を揺さぶる。
たまに意識を取り戻すのかうわごとのように「つないでて」「たすけて」と言う。
強い刺激を与え続けないと連れて行かれてしまうという情報を思い出した僕は徐に妹に対してセックスのまねごとを始めた。
着衣のまま、正常位の体制をとって腰を打ち付けるだけだけど、それは僕にとってはセックスだった。
たまにうわごとを繰り返す妹の体は細く、どんどん軽くなっていく気がする。
魂の比重ってどれくらいなんだろうと思いながら僕は腰を振る。
「そんなことをしてももう無理だよ。それは、**はもう無理だ」
ドアの前から唐突に親父が声をかけてきた。
僕は腰を振りながら母親に必死に願う。母さん、僕も連れて行って下さい。僕も連れて行って下さい。
でも僕は知ってる。僕は絶対に連れて行かれる側にはまわれない。親父はもう連れて行かれているに等しい。妹もあと少しで旅立つだろう。でも僕に順番は回ってこない。
僕に順番は回ってこない。